9.「初めての火葬車」Ⅱ
後になって知ったことだが、保健所に連れて行くというのは、確かに費用こそ抑えられるかもしれない。けれど行政の焼却炉で、他の動物や生活ゴミと一緒に処分され、骨の一片すら手元には戻らないのだという。子供の頃の記憶を辿れば、ペットの最期といえば保健所か、あるいは田舎の山のどこかに土葬するのが当たり前だった。犬は外飼いでペットフードもない時代の話ですが・・・。
無知だった私は、幸いにも「訪問火葬車」という存在を知り、手配することができた。
約束の時刻、迎えに現れたのはスーツを身にまとった一人の男性だった。しかし、彼の背後に停められた車両を見て、胸の奥に小さな引っかかりが生まれる。軽トラックの荷台に載せられた火葬炉は、どこか街で見かける焼きいも屋のそれを思わせ、一瞬で不安が首をもたげた。
(ここに、この子を託して本当に大丈夫なのだろうか……)
もし納得がいかなければ、このまま断ってしまおう。そう固く心に決め、私は静かに言葉を口にした。断ったからと言って後の手立てを考えていた訳でもなかったが・・・・。
「……火葬炉の中を、先に見せていただけますか」
疑念を込めた私の問いかけに対し、男性は嫌な顔ひとつせず、穏やかに頷いた。重い炉の扉を全開にした。オシッコシートが一枚真ん中に敷かれていた・・・。炉の周りには少し焦げたシミもあった。後に「火葬車」をお願いする時にはオプションで、お布団や棺がある事を知ったがその日は私が用意した、白い小さなタオルの上に眠る我が子を寝かせた。
つづく
